「…有梨は西嶋さんのことが好きなんだろ?」

躊躇いつつも、小さく首を縦に振った。

「付き合うの?」
「ううん、彼にはそういう対象で見られてないから」
「…そっか」

大きく息を吐き、顔を上げた陽太は、もう悲しい顔はしていなかった。

「友達でいよう、有梨」

私が知っている、明るくはつらつとした声。

「罪滅ぼしみたいになっちゃうのは嫌だけど、有梨の幸せを願える自分でいたいからさ。会った時は笑って話せる関係でいたい」

少しの曇りもなく、やさしい一重がくしゃっと微笑む。
こんな笑顔を見るのはいつ以来だろう。
きっと陽太はわだかまりなく『友達』でいることで、私の罪悪感をも軽くしようとしてくれている。

「ごめん、陽太。ありがと…」

言いたいことはたくさんあるのに、月並みな言葉しか出て来ない。
伸びてきた手が、控え目に頭をポンポンとなでる。
どこまでもやさしい陽太に、胸が熱くなった。