『無理だよ、別れよう』とはっきり言ってしまえばいい。
それで済む話だ。
だけど、罪悪感と、情と、甘えと、残量の見えない恋心と。
そういうものがごちゃごちゃになって、突き放すことができない。
弱っている陽太をもう傷つけたくない。

私の意思なんて、風に飛ばされるような薄っぺらいものでしかなかった。

「…うん。陽太を、大事にしたい」

さんざんためらった挙句、曖昧な言葉が口から溢れた。
陽太はホッとしたように表情を緩めて、私を抱きしめる。

こんな返事をした以上、変わらなければならない。
歩み寄ることを諦めてはいけない。
過去を過去にして、前に進んでいけるように。

『君に幸せでいてほしい』

陽太に応えられれば、それはきっと私にとっても幸せになる。
そうなっていけたらいい。
そうならなければ、いけないんだ。