ROCKな人魚姫《前編》



「はい。お待たせ。」


エミから冷たく冷えた缶を受け取る。


「ありがと。あたしも、悪いほうばっかり考えているわけじゃないんだよ?ちゃんといい方にいった場合も考えた。」


話している途中にも、ユウの顔を思い出し、切なくなる。


エミの顔を見ず、遠くを見つめたまま続けた。


「もしね、ユウがあたしの告白にOKを出してくれたとする。付き合えたときね。ここでもうちのバンドは3人ってことが問題になってくる。」


「あー。そうだね。付き合えたのなら尚更、シノブは気を使うよね。」


あたしが言いたかったことをエミが続けた。


「ましてや、付き合って別れた時なんか、バンドなんて出来たもんじゃないよ。」


付き合えた時のほうが、バンドへのリスクは高くなる。

そう考えた。


「あたしは、ユウが好き。でも、ユウのドラムでベースが弾きたいんだ。あたしがユウに告白するってだけで、このバンドはいい方には向かわない。」







結果がどうであれ、告白することは、バンドの崩壊を意味する。