ROCKな人魚姫《前編》




ドラム音がないと、どこにあわせて良いのかがわからない。


カズヤさんのギターもシノブ以上の腕前だし、タクマさんのボーカルも上手だし、あたしは戸惑った。


バンドとしても、あたしの心の中でも、ユウの存在が大切なのを改めて実感した。




そして、ベースを弾きながらも、

テーブルに置かれたシノブの携帯が光っていることが気になっていた。



音も振動も激しいから、誰一人、携帯が光っていることには気づかない。


でも、あの着信は間違いなくユウだ。


あたしはそう確信した。





一曲目が終わるとすぐにシノブに伝えた。

「ねぇ、さっきから携帯光ってるよ?」


絶対ユウだから。という気持ちを込めて。


「あぁ。ほっといていいんじゃね?次の曲やるぞ。」


ちらっと携帯を覗いて電話に出ることはしなかった。


あたしはビックリして、

「えっ。ユウ、もう着いたんじゃないの?だから連絡してきてるんじゃないの?」


懸命に伝えた。


「だって、遅刻した奴が悪いじゃん。歩いてここまでくればいいんだよ。歩けなくもないし。」


シノブの冷たさにさらに驚いた。


「歩いて来るにも道わからないんじゃないの?」