「蒼羽を見てると、自分を顧みてないようで…ほっとけないの」



だから――



そう喋る明里を、咄嗟に俺の腕の中に閉じ込める。



「え、え…っ?蒼羽、どうしたの?」

「……これからは、」



気を付けるよ



ほら。

泳がされているのは、やっぱり俺の方。

俺の心臓が少し速くなったなんて、明里は少しも気づいてないでしょ?



「(ほっとけないのは…俺の方なんだよ)」



明里を前にすると、どうも自分が崩れる。

だけど、どういうことか。

崩れる自分を、明里には知られたくない。



だから、言わなかった。

明里には、俺の過去を何一つ。

知らせるつもりもない。



「(優利にも口止めしてて良かった)」



大狼の事も、白狼の事も、優利のあの夜の事も。

全部全部、君は知らないでいて。



「ねえ明里」