あの男、結構面白いかもしれない。



だけど――


不良たちの次の言葉で、俺の顔から笑みが消える。



『と言ってもね~君のにーちゃん雲隠れしてんだよね~』
『警察に追われてるって?大変だよなぁお前も。あの嵐太を兄に持つなんて』


『……嵐太?』



思わず声に出してしまった俺。

久しぶりに聞いた名前に、昔の嫌な記憶が蘇ってくる。

だけど、それよりも…



『不良たちのいう事が正しければ、あの男は嵐太の弟ってこと?』



日向 明里の友達、夕暮 優利。

その兄は、夕暮 嵐太。



『嵐太の親族なんてノーマークだったから…知らなかった』



そうか、そうなのか。

俺の隣の席にいる日向と仲良くしているあの男は、

俺を万引き犯に陥れたヤツの弟なのか。



『……っ』



頭がぐらりと揺れる。

目の前の事実に追いつかない思考。

どうしても忘れられない嫌な過去とその記憶。



『……はぁ』



深いため息をついた、その時。