『お前のにーちゃんに借りがあるんだよな~?』
『ここで会ったのも何かの縁だし軽くボコらせろや』



日も暮れた夜。

俺が外を歩いていると、不良に絡まれている一人の男を見つけた。



『あれは、確か…』



見たことがある。

なぜなら、


――『よ、よろしくね…、夜野くん…!』


この前、席替えをして隣同士になって、それがきっかけで初めて挨拶を交わした人。

日向 明里

その日向と、よく一緒にいる男だ。



『妙な偶然なのか、なんなのか…』



助けようか迷っていた。

その時だった。



『来るな!俺は俺だ…!

兄貴に用があるなら、直接会いに行けばいいだろ!』



不良に絡まれても尚。

自分がビビっても尚。

そんなでかい声で反論するなんて。



『(へぇ…)』



気骨のある男だと分かり、俺の口角がニヤリと上がる。