「明里…?」

「私はケンカなんて出来ないけど…でも。囮(おとり)くらいにはなれると思うんだ…っ」



だから神様、お願いです。

好きな人を守れるだけの力をください。

一回きりでいいんです。

ほんの一瞬。

蒼羽を逃がす時間を稼げれば、それで…



「明里!なに無茶なこと言ってんだ!」

「優利ごめん、私…行くね!」



錆びて外れた鉄格子の棒が、無残に地面に転がっている。

私はそれを握り締め、そして――

力の限り、思い切り振り上げた。



「(蒼羽…!)」



あなたを暗闇に一人きりなんてさせない。

あなたの夜は、必ず私が明けさせる。

私の灯(あかり)で、あなたを照らすの。



「せーの…っ!!」



鉄の棒を窓から投げ入れ、自分も入ろうとした、

その時だった。




「思い出すなぁ。二年前の事」




この場に、一人の声が響く。


それは同時に、


私たちに希望の光が降り注いだ瞬間だった。