「…っ、うん」

「だからね、明里」



ニコッと、蒼羽は笑った。

それは、心からの笑顔。



「だから明里。君は笑ってて。

君には雲一つない晴れが、一番良く似合うんだから」

「蒼羽…っ」



蒼羽は「うん」と言って目を伏せる。

次に、頬から手を離して、私に背中を向けた。

そして、最後に…



「ありがとう、明里」



それだけ言って、蒼羽は後ろ脚に力を込めた。


私を一度も見ることなく、振り返ることもなく。


連中に向かって一気に蹴り出し、再び拳を振り上げる。


だけど蒼羽が動けば動くほど…お腹からにじみ出る「赤」も、四方八方へ伸びているようだった。



「蒼羽ぁー!!!!」



やめて、やめてよ蒼羽。

本当に死んじゃう、本当にいなくなっちゃう。

私、まだ蒼羽に謝ってないよ。

騙してごめんって、ウソついてごめんって。

お願いだから、謝らさせて。

それに、私まだ何もしてないよ。

いつも助けてもらってばかりで、肝心な時に何も返せてないよ。



「蒼羽、蒼羽ぁっ!!」



蒼羽の夜を私が照らすなら、あなたが太陽の届かない所に行っちゃだめ。

いつもの不敵な笑みを浮かべて、私の目の届く所にいてよ。

だから行かないで、傍にいて。



「おい!あいつ本当にヤバいぞ…!」