「なに、蒼羽…っ」



涙を流しながら返事をした私に、振り返った蒼羽は「はは」と笑った。

そして「参ったな」と髪をクシャリをかき上げる。



「このタイミングで泣かないで、明里」

「む、無理…っ」



「俺はね、毎日が晴れだったら…。明里が笑ってくれれば、それで良かったんだよ」

「晴れ…?」

「君の名前は【ひなた あかり】でしょ?太陽の光、そのものだ。

だからね、」



夜の俺を照らしてくれるかなって、そんな事を思ったんだよ



「俺の名前は【夜野】だからね。正反対な名前の明里に、興味があったんだ。

そして、

それはただの興味…のはずだったんだ。

なのに、いつの日か放っておけなくなった。なんでだろうね」

「…っ」



そう言いながら、私の頬を愛おしそうに撫でる蒼羽。

誰のとも分からない血がついた蒼羽の手。

不思議なくらい、その手を怖いとは思わなくて…。

まるで蒼羽を求めるように、その手に縋って涙を流した。



「…君の魂胆を知ってなお、俺は明里を手放そうとは思わなかった。むしろ傍にいさせた。

それほどまでに…明里の光は、温かくて…居心地が良かった」