「ちが…っ!俺はあの時、断ったはずだ!」



あの時――というのは、蒼羽の様子が変だった金曜の夜。


学校から家に帰るまでの道中で、優利は暴走族に声をかけられていた。

と言っても、



――なあ嵐太の弟。お前は夜野を恨んでるか?
――一緒に倒そうぜ、夜野蒼羽を



話を持ち掛けて来た暴走族たちを、優利は「必要ない」と断ったのだけど。



『暴走族ってのは随分と卑怯な手を使うんだな。一対一の勝負に手助けなんて必要ない。悪いが断る。

俺は俺の勝負を挑みに行くんだ。これは俺と夜野の戦いだ。首を突っ込まないでくれ』

『へぇ。兄の嵐太とは違って、随分まっすぐな生き方してるな?』

『俺は…兄貴とは違う。兄貴みたいにならないよう生きて来たんだ』




あの夜。

俺は確かに、そう言った。

暴走族も「わーったよ」と言って、納得して帰ったはずだ。



それなのに、なぜ――



「……っ」