『っ!!』



だからこそ優利は、私に本当の事が言えなかった。

私を人質に取られているようなものだったから。



「でも、ま。君が口外しなかったおかげで楽しい時間が過ごせた。感謝するよ」

「俺も夜野に感謝してる。そして明里を暴走族の世界に巻き込もうとするお前を恨んでいる。

だから決闘だ。

明里を解放するための決闘。いいな?」

「…もちろん」



グッと足に力を入れて、ついに優利は前進した。

蒼羽に向かって、拳を振り上げながら。

蒼羽はニッと笑いながら拳を交わし、そして自身も殴るために腕を思い切り上げた、



その時だった。



「よー蒼羽。久しぶりぃ」

「――っ」



怒りの炎を宿す蒼羽の目が、今ゆっくりと開かれる。

そして、いつかの苦い過去を、その瞳に映したのだった。