「!」



蒼羽の柔らかい笑みを初めて見た優利は、一瞬だけ言葉を失う。

だけど「そうだよな」と囁き…握りこぶしを握った。



「お前は本当は優しい奴なんだよな、夜野。じゃないと、あの夜に俺を助けないもんな」



ザリッとコンクリートを踏み優利が構えの姿勢に入ったのを見て、蒼羽も態勢を低くする。



「助けたつもりなんてない。あれは俺の憂さ晴らしだよ」



「憂さ晴らし?」と優利が眉間を顰めたのを見て、蒼羽が笑った。今度は不敵な笑みだ。



「昔、色々あってね」

「…そうか」



まさか自分の兄が蒼羽を陥れたなんて知らない優利は「お前も大変なんだな」と、暴走族の世界に身を置く蒼羽に同情した。



「変な肩書があると生きづらい世の中だ」