「……ん」



「眠たいなら、寝ていいからね」

「……」


赤ちゃんじゃないんだから…と思ったけど。

蒼羽の手が背中でリズム良く跳ねるのが気持ちよくて…思わずまどろんでしまう。



「おやすみ、明里」

「うん…」



目に溜まっていた涙を一滴落として、私は目を閉じる。

すると意識はだんだんと薄くなり、本当に赤ちゃんのようにスヤスヤ眠ってしまった。


そんな私を抱いたまま、蒼羽は…



「もうすぐ好きな人の所に戻れるよ」



と。

小さな声で呟いた。


その時に、私の頬を流れた涙を再び拭う。

蒼羽は、意味ありげにそれを見つめた。



「今日は雨、か。

本当移り変わりが激しい天気だね」



眉を八の字にして笑いながら、蒼羽は窓の外を見る。

空には、真っ赤な夕日が燃え上がっていた。



「眩しい…。早く夜にならないかな」



蒼羽の意に反して、夕暮れは続く。



夕日が窓から二人を見守るように、

あるいは見つめるように…



真っ赤な光が、

しばらく部屋の中に降り注いだ。