「桃先輩は可愛い」【完】




「帰りましょう。」



「…あ、うん。」



いつよりだいぶ暗めな雰囲気に動揺を隠せない。



なんかすごい怒ってる?



ぴりぴりとした痛い空気が伝わってくる。



「じゃ、俺部活行くわ!さんきゅーな!」




「うい、頑張れ。」



そう言って私から手を離して、去っていく雄介に、軽く手を振る。



廊下を走っていく雄介から、奴に目線を移すと、驚くほど黒いオーラを放って、私のことを見つめる奴の姿があった。



ただならぬ雰囲気を感じたが、ここはひとまず気づかないふりをした。



が、その雰囲気に気づかないふりをして数秒。




「…桃先輩はいつもあんな感じなんですか。」



「へ?」





「男の輪に入ってあんな距離で話して、肩組むんですか。」




チラッと奴を見上げると、いつになく真剣な表情をしていた。



…なんでそんなこと。