やけに真剣なその表情に、頷くことしかできなかった。
…あんな威圧感のある冬野椿は初めてだった。
周りの男子たちも圧倒されて、黙り込んでいた。
なんだったんだろう。
放課後になって、帰る準備をしていたとき。
「桃ー。もう帰るのかー?」
声をかけてきたのは、クラスメイトの雄介だった。
それなりに仲のいい男友達だ。
「ああ、うん、そろそろ帰る。」
こっちこっちと手招きをするから、ゆっくり雄介に近づく。
「実は相談があって…」
周りを気にしながら、めいいっぱい近づいて来て、小声で話す雄介。
何の話題かは大体察しがつく。
「柚ちゃん、もうすぐ誕生日じゃん?なんか欲しいものとか聞いてね?」
そう、雄介も柚のことが好き。
「あー、この前ほしいコスメがあるとか言ってた。」
「え!?どれ?」
「ちょっと待って調べる。」
女子力なんて皆無な私は柚が言っていた、コスメの名前を覚えておくことができなかったから調べるしかない。
自分のスマホを出して、柚の言っていたコスメを検索にかけてみる。