「桃先輩は可愛い」【完】




「かもね。」



困ったように眉毛を下げて弱く笑うその顔に、胸が鳴る。




「…っ、」



さっきからコロコロ変わる冬野椿の表情に、心が掴まれっぱなしだ。


「もしかして、桃先輩が逃げちゃったのはあの子たちにやきもち焼いたから?」



にやっと意地悪にあがる口角。



近づく距離。



ブラック冬野椿だ。




「……そうかも、」





「っ、へ?」



信じられないというような驚いた冬野椿の表情が目に入る。





「…焼いたかも。ヤキモチ。」




もう、認めるしかない。


完全にヤキモチだ。


冬野椿が他の子と話してるのが私にとってすごく嫌なんだ。


「っ…あーもうだめだ。絶対全力で否定すると思ってたのに。」


その言葉と同時に、近づいた距離がゼロになって、抱きしめられていると気づいた。



制服越しに感じる体温。



「ちょ、」



パニックになる脳内。



心臓が暴れだす。



「困るなぁ。」


耳元で呟かれる甘い声。



165センチある私の体全身が包み込まれて、冬野椿が男だってことを感じさせる。



「ごめん、」



クラクラする。




「…そうじゃなくって、」



ため息まじりの、声は私の耳にかかってくすぐったい。