「桃先輩は可愛い」【完】


その瞬間、冬野椿の目が変わったのがわかった。



それと同時に手首を握っている手の力が強くなった。



「っ、」



「いくら桃先輩でも、それ以上言ったら俺本気で怒る。」



睨むような、目。



うんと低い声。



強い力。



…もう怒ってる。





「だって、」



「だって何?」



私が少し怯えているのがわかったのか、いつも通りの冬野椿に戻ったような気がした。


「私なんてっ、」



私っていつの間にこんなにめんどくさくなったんだろう。



「…桃先輩。こっち見て。」



なだめるような声。



うつむく私に視線を合わせようと、屈んで下から覗き込まれる。



微笑みながら私の顔をじっくり見る冬野椿。



「っ、」



目を合わせてるだけなのに、どきどきしておかしくなりそう。




「やっぱり桃先輩がなんて言おうと可愛い。…だからこれ以上俺の気持ちを否定しないで?」



見つめあって数秒。


何かと思ったらそんな言葉。


予想外の言葉に、思考が停止する。




「…バッ…バカなの。」



やっと出てきた言葉はやっぱり可愛くない。