「桃先輩は可愛い」【完】




数十秒たったころ。



「…桃先輩っ、」



背後から聞こえてくる声にびっくりして振り向く。




「つ、ついてこないでよ!」



歩くスピードが速くなる。



もう放っておいてほしい。


お願いだから。



もう自分の気持ちがわからない。




「なんでっ、逃げるんですか、」


歩くスピードを上げたところで、冬野椿には何も効果がなかったみたいで、あっさり追いつかれてしまった。



…無駄に足が長い。




「捕まえた」


手首を掴まれて、強制停止させられる。




「なによっ、」




「逃げないで。」



冬野椿の綺麗な瞳が悲しそうに揺れる。



私以上に余裕がないのが伝わってくる。




「…っ、どうして私に構うの?」



こんなガサツで、男勝りな私に。



「桃先輩が可愛いからです。」



また私には不釣り合いな言葉。


そんなバカみたいなこと、冬野椿しか言わない。


黙ってても可愛い子に囲まれる冬野椿は、女には困ってないはずなのに。




「またそれ…あんなに可愛い友達あるのに、嘘ばっかり言って、そうやってからかって楽しい?」