少しでも心配をした私がバカだった。
こんな気持ちになるなら来なければよかった。
「桃先輩…?」
「別に、なんでもないから。」
自分でも驚くほど低い声。
「じゃあどうして、」
「別にどうだっていいでしょ、」
それだけ言って、回れ右をして保健室を出た。
ああ、どうしても素直になれない。
お礼を言いたかったのに、目すら合わせることができなかった。
何さ、楽しそうに話してたくせに。
私に構わずに、あの子達と話していればいいのに。
後ろから聞こえる私を呼ぶ声に、振り返ることなく、自分の教室に戻った。
黒い感情は消えぬまま。
この感情の名前も、対処法もわからない。
戸惑うしかできない自分に嫌気がさした。