保健室の前について、いざ入ろうと扉と開けると、聞こえてくる騒がしい声。
「椿くん大丈夫ー?」
「大丈夫大丈夫!こけただけだから!」
「もう超びっくりしたんだからぁ〜」
「ごめんね?」
複数の女の子たちに囲まれて、楽しそうに話している冬野椿の声。
…何さ甘ったるい声に鼻の下伸ばしちゃって。
私が来なくても、可愛い女の子たくさん来てくれるんじゃん。
倒れたんじゃなくて、ただの怪我みたいだし。
溢れて止まらない黒い感情。
「あれ、桃先輩!?どこか悪いんですか?!」
私を見つけた冬野椿は女の子たちの間を縫って、私のもとに駆け寄ってきた。
刺さる視線。
…この場にいたくない。
いつも通りヘラヘラと笑う冬野椿にも、すごく腹が立つ。
そうだよ。あいつは誰にでも優しいんだ。
昨日来てくれたのだって、私が特別なわけではない。