今まで見たことのないくらい強い目に、何も言えなくなる。
「っ、」
言われた通り、全力で奴を押し退けようとするけどびくともしない。
私が必死に押し返そうとするたび、意地悪に笑う冬野椿。
「ね?無理でしょ。」
「っ、」
「ちなみにこれ本気出してないよ?」
もう何も言えない。
この近すぎる距離に、脳が正常に機能しない。
…心臓がうるさい。
「参りましたって言ったら離してあげる。」
これ以上はダメって、体が悲鳴をあげている。
脳内で危険を知らせるサイレンがなってる。
やけに色気のある笑み。
「…ま、参りました」
「ふっ、よろしい。」
じっとり私の目を見てそう微笑み、私と冬野椿の距離はやっと保たれた。
離れてもまだドキドキと心臓が鳴り止まないのは、私が男の人に耐性がないせい。
…いつもの冬野椿じゃなかった。
「男はみんなこれくらいの力なんです。桃先輩なんて力で抑え込める。」
「…っ、」
「桃先輩は可愛いって自覚を持ってください。」
呆れたようにため息混じりに浴びせられる言葉。
またこれだ。
…誰もそんなこと思ってないのに。