ある日の学校に行く途中に痴漢にあった。
私は動揺した。
声が出なくて改札を出る時にヒュウガくんに電話をしたけど、出ない。
連絡を入れても帰ってこない。
しょうがない、学校に行く途中だから、と思いながらもひとりでこの苦しさを乗越えりなかった。
シュウのことが1番に脳に浮かんだ
「おい、電車だわ」
電話をかけたけど切られてしまい
こうLINEで言われた。
それでも私は続けて
「喋らなくていいからでて欲しい」
と続けた。

涙が止まらなかった。
電話に出たシュウはきっと驚いただろう。
初めて怖いと思った自分が汚れてしまったとも思った。
こんなに辛いのなんて知らなかった。
シュウに振り絞る声で
「痴漢にあった」
と一言だけ伝えて、電話は繋げたままでいてくれた。
私の使ってる駅から学校まで20分もあるのに、シュウはJR線からこっちまで10分もかからず、なんなら5分ほどで私の所に来た。
信じられなかった。
死にそうな程に息が切れているシュウを見て
安心してまた涙が出た。

何かあるときシュウは大体そばに居てくれてた。
いつの日かの私は部活動で腰を痛めてしまい、起き上がるのもしんどかった日に、
私の好きな物を知ってますかのように、得意げな顔でコンビニエンスストアの袋を持って窓から差し入れをくれた。
「上がってく?」
夜中の11時過ぎだったのに、
「腰痛いんだよね」
のひと言でまさか来ると思っていなかったから、自然とそう言ってしまった。
私たちは浮気と隣り合わせだったと思う。
シュウは日付が変わると同時に窓からまた
「じゃね」
と言って帰って行った。
皆さんが想像しているようなことはしていない。

シュウはそういう男だった。
何事も真っ直ぐで本当に言葉だけじゃなく行動によく示してくれるタイプだった。
何度も助けられた。
そのせいで何度も思い出すことがあった。
ヒュウガくんと付き合いながらも、
頼りにしてしまうことが何度かあったけど、
それでもシュウのことは好きにはならなかった。