ホワイトビターショコラ〜幼馴染からの卒業〜




その日をきっかけに、私は九竜くんに恋をした。


初めての恋に戸惑うことばかり。
それからは自然と九竜くんのことを目で追ってしまうし、剣道や空手をやってる姿を見てはときめきまくってる。

毎日好きが大きくなる。

でも、この恋は叶わない。



「ねぇ、九竜くんってさ。めちゃめちゃモテるのになんで彼女作らないの?」



1年前のある日、いつも通りみんなで夕飯を食べてる時、それとなく聞いたことがある。
私以外のメンバーも同じことが気になっていたらしく、全員興味津々で九竜くんを見た。

返ってきた答えに、全員目が点になった。


「許嫁がいるから」


…えっ、許嫁?


「許嫁って…つまり、婚約者ってこと?」
「そう」
「マジかよ九竜!冗談じゃねーの?」


橙矢がそう言うと、九竜くんは真顔で返した。


「冗談じゃない」
「じゃあその許嫁、見せてみろよ」
「やだ」
「なんでだよ!いいじゃねーか」
「絶対見せない」


橙矢がどんなに騒いでも、九竜くんは頑なに見せなかった。

正直この時は、絶対冗談だと思ってた。
九竜くんは冗談を言う性格じゃないけど、中学生で許嫁なんて…流石にねぇ?

後で橙矢たち他の寮生と、「子どもの頃に結婚の約束したことを今も婚約してると思ってるんじゃないか?」と話し合い、意外とロマンチストな変な人、ということになった。