悔しいことには変わりないけどな…。
勝手に譲り受けたそのチョコは、ホワイトチョコのはずなのに何故か少し苦く感じた。
それから1週間後、九竜が卒業と同時に寮を出ることを知った。
うちの学校は中高一貫だから、高校もそのまま持ち上がりかと思っていたら、密かに受験していたらしい。
色々と衝撃だったけど、くるみは……こんな時でも俺が気になるのはあいつのこと。
くるみは、どうする気なんだろう…?
九竜が寮を去る卒業式の日は、ホワイトデーでもある。
バレンタインの特設フロアは、どこもホワイトデーに変わっていた。
俺はその中から、あるチョコレートを手に取った。
* * *
「それじゃあ、お世話になりました」
大きなスーツケースを持ち、九竜は寮母さんに向かって頭を下げる。
「こちらこそ、ありがとう。頑張ってね」
笑顔で見送る寮母さんの隣で、くるみも笑っていた。去り行く九竜に向かって、何度も何度も手を振った。
「また会おうね、九竜くん…!」
でも、俺は気づいてる。
くるみの目が少し赤いこと。
お前は笑顔で見送ったと思ってるんだろうな。
何があったかなんて丸わかりなんだよ。
なのにバカみてーに動画なんか撮りやがって。
「こんな時まで、ヘラヘラ動画撮ってんじゃねーよ」
「橙矢…」



