* * *
それはバレンタインのこと。
「これっ!良かったら、受け取ってください…!」
後輩の女の子に呼び出されたと思ったら、まさかのチョコレートを差し出された。
「和泉先輩のこと、ずっと好きでした…!」
真っ赤になりながら、一生懸命想いを伝えてくれる女の子が、俺にもいる。
しかも結構かわいくね?
マジでこんな子が俺のことを?
素直に嬉しいけど、でも……
「ごめん、他に好きな奴がいるんだ」
ダメなんだ、あいつじゃないと。
欲しいのはずっと一人だけなんだ。
隣にいたいのも、隣にいて欲しいのも、くるみただ一人だけなんだよ――。
そんなくるみは、溢れるくらいにチョコが詰め込まれた九竜の下駄箱の前で突っ立っていた。
なるべくいつも通りの声色を心がけて、声をかける。
「相変わらずすげえな、九竜のやつ」
「わっ、橙矢!いきなり話しかけてこないでよ」
「なんだよ、別にいいだろ」
くるみはいつも通りだった。
それどころか俺を見て失礼なこと吐かしやがる。
「言っとくけど、もらえなかったわけじゃねぇからな!俺は…」
「俺は?」
「…っ、なんでもない。それよりお前こそ、どーせ渡す相手なんていないだろ?
俺がもらってやってもいいけど?」



