バレンタインから1週間経った日のことだった。
九竜くんが寮から出ていくことを知ったのは。
「――九竜くんっ!」
「青葉?」
「聞いたよっ!寮から出て行くって本当!?」
ただの噂であって欲しいと願いながら、九竜くんの返答を待った。
「…本当」
「なんで!?」
「元々決めてたから。高校は地元に戻るって」
九竜くんは地方留学でこっちに来たと、前に話していたことがある。
事情はよく知らないけど、あまり実家に帰る様子もなかったから、てっきり高校もそのまま寮に残るんだと思ってた。
違うの?
もう会えなくなるの…?
「そう、なんだ…」
「うん」
「寂しいな…紫帆がいなくなって、九竜くんまでいなくなっちゃうんだ」
――今、笑えてる?
泣きそうになんかなってないよね?
「私と九竜くんはアオアオコンビだったのになぁ」
「…何それ」
「青葉と蒼永でアオアオでしょー?絶対バズるコンビじゃな〜い?」
大丈夫、いつもみたいにふざけて笑えてる。
気持ちはバレてないはず。
でも、本当にそれでいいの……?
「…いつまでいるの?」
「卒業式が最後。色々あって高校入学は遅れるけど、寮を出るのは卒業式」
ってことは、あと1ヶ月もないんだ――…。



