新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「遊びでも楽しかったら、それでいいか? それで、お前は本当に楽しいのか? そんな自分のことを大事にしてくれないような、遊びに見えるような男なら、やめた方がいい」
高橋さん……。
高橋さんは、暗に自分のことをそう言ったんだ。そんな人じゃないのに……私は……。
「ごめんな……さい。私……」
哀しいのか、怖いのか、よく分からないまま涙が止めどなく溢れ出した。
「私……本当……は、嫌です。遊びなんて……嫌なんです。でも、何だかケイティさんのことを聞くのが怖くて……それで……」
「……」
「高橋さんが、出張に行く前にケイティさんと一緒に居るのを見てしまって、それで……それで、誰なのか聞きたかったのですが、聞けないまま高橋さんは出張に行ってしまって。でも、どうしても気になって勇気を出して聞いたら……そしたら……それなのに、今日昼間会ってしまって、もうどうしたらいいか分からなくて……ごめんなさい。高橋さんまで、酷く言ってしまって……」
涙で、それ以上、もう言葉が出て来なかった。
泣き顔を、高橋さんに見られたくない。けれど、両手は思い通りにならなくて……。
「泣くぐらいなら、最初から言うな」
エッ……。
すると、高橋さんが右手で涙を拭ってくれた。
「ごめ……んな……さい」
泣き過ぎて、しゃくりあげながら言っているので上手く言葉に出来ない。
「ケイティさんは、今度就航するLCCの共同出資会社の社長のお嬢さんだ」
「社長の……お嬢さん」
「そうだ。今回、最終の契約締結に際し、来日した社長と一緒に日本に来たんだが、何分にもマスコミや周りからも注目されてるから、先方の社長がマスコミに顔が知れ渡ってはと、お嬢さんのことを心配して、形式上、秘書の1人ということで今回は来日した。実際は、今回の来日の前に、1度、スタッフと一緒に日本に来て、関西に観光に行ったりしてとても日本が気に入ってしまったらしく、それで帰国してから、また直ぐ今回の来日にも一緒に付いてきたというのが真相だ。だから、お前が俺の出張前にケイティさんと一緒に居るところを見たというのは、恐らく先方の社長から連絡を受けて、一緒に晩ご飯を食べに行った時だと思う」