新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「本当に、申し訳ありません。失礼します」
「お前に、話がある」
今日は、もう話したくない。
「高橋さん。あの……私……私は、話ないですから」
何を言ってるのか、自分でもめちゃくちゃだった。
「お前になくても、俺がある」
高橋さん……。
高橋さんを見たまま、応えに困っていると、両手に持っていた荷物を高橋さんが持ってくれていた。
「乗って」
乗ってって、高橋さん?
「あの……」
「寒いから」
「あっ、はい……」
後部座席に私の荷物を置いて、助手席のドアを開けてくれた高橋さんに半ば強制的に助手席のシートに座らされると、高橋さんはドアを閉めて運転席側に廻って運転席に座った。
「今日は、お疲れ様。視察に、一緒に廻ってもらって悪かったな」
「いえ……とんでもないです。あまり、お役に立てなくて……」
視察と聞いて、ケイティさんのことを思い出していた。
「いや、彼女もとても喜んでたぞ。」
彼女……。
高橋さんの口から彼女という言葉を聞いて、ズキッと胸が痛んだ。
「実は、彼女……」
何も聞きたくない。高橋さんと彼女のことなんて。
「あの、高橋さん」
話の途中で、高橋さんに話し掛けていた。
「何だ?」
「その……ケイティさんのことは、もう無理に話されなくていいですから」
何だか、嫌な感じに聞こえてしまったかもしれない。でも、これ以上、聞きたくなかった。
「無理に?」
聞き返した高橋さんの顔を恐る恐る見たが、ポーカーフェイスの高橋さんは、表情ひとつ変えずに私を見ている。