新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

電話? 彼女らしき人から?
高橋さんに、彼女が居るのか、居ないのかは……。
ふと、あの女性の姿が目に浮かんだ。あの人が、高橋さんの彼女なのかな?
「ねえ、言える範囲で構わないから。何となく、貴女の勘でどう? 彼女、居そうかしら?」
高橋さんに彼女が居るのかどうかなんて、最近、考えたこともなかった。
随分前に聞いた時は、居ないと言ってた。でも、あれからかなり月日も経ってるし、本当のところは分からない。
「お願い。教えて?」
「それは……」
「失礼します。あと15分ほどでお食事が終わられますので、皆さんお部屋か出られると思います」
お店の人が、様子を知らせにきてくれた。
「分かりました。ありがとうございます」
周りの秘書の人達が慌てて片付けを始めたので、それに習ってお弁当を片付けて支度を始めた。
「交代で、トイレに行きましょう」
「はい」
社長秘書の人が、瞬時にテキパキと指示を出してくれた。流石、社長秘書だけあって、誰もそれに逆らう人も和を見出す人も居ない。みんな、仕事に徹している。凄いな。先ほどまでランチをしていた時の表情とは、まるで違う。見習わなきゃ。
支度を終えて、昼食会が終わって部屋から出てくるのを通路で待っていると、ほぼ時間通りに昼食会を終えた取締役の人達が、恐らく取引先の人達だろう。見慣れない顔の人達と談笑しながら出て来て、エレベーターの方に向かっていった。その後ろから、絶妙な距離を置いてそれぞれの秘書の人達が後から続いて行く。私は、どうすればいいんだろう? 一緒に秘書の人達に付いて行くのは何となく変なので、この場を離れずに高橋さんが来るのを待っていると、暫くして高橋さんが部屋から出て来て、私の姿を見つけると手招きをしたので急いで向かった。
「待たせて悪かったな」
「いえ、とんでもないです」
「紹介するから、入って」
高橋さんは、部屋に入るよう誘った。
「はい。失礼しま……」
「紹介します。一緒に仕事をしてます、矢島陽子さんです」
「私、ケイティ。ケイティ・清村・ロペス。こんにちは、陽子」
握手を求められたが、動揺していて手を差し出せない。
何故、此処に?
何で、此処に居るの?