「少し遅れてしまうかもしれないが、視察の方が今は大事だから悪いな」
そんなに大事な視察なの?
「でも、そんなに大事な視察なんでしたら、私よりも……」
「矢島さんでないと、駄目なんだ」
高橋さんに、言葉を遮るようにして言われてしまった。
「だから、明日の11時には外出する予定でいてくれ。中原には、もう話してあるから大丈夫だ。呼び止めて、悪かったな。それじゃ」
「あの……」
呼び止めようとしたが、ちょうど来たエレベーターに乗って高橋さんは行ってしまった。
視察って……何の視察なの?
私でなければ駄目って?
何が何だか、さっぱり分からない。高橋さんは行ってしまったし、それに……。
警備本部でバッグの中身を見せて外に出ると、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をした。
高橋さんに呼び止められたのは、もしかしたら昨日のことを説明してくれるのかという淡い期待を抱いていた。
けれど、それは違っていて……高橋さんは、ひと言もその件には触れなかった。仕事の話だけして、直ぐに行ってしまった。仕事で傍に居る高橋さんと、プライベートの高橋さん。確かに、仕事とプライベートはまったく別物だけれど、高橋さんが何を考えているのか分からない。これだけ近くに居ながら、私は高橋さんの何を見ているんだろう?
「深刻そうな表情だね」
エッ……。
「柏木さん」
「お疲れ」
「お疲れ様です」
振り返ると、柏木さんが後ろに居た。
「どうかしたの?」
「い、いえ、何でもないです。ちょっと、考え事していて」
そんなに大事な視察なの?
「でも、そんなに大事な視察なんでしたら、私よりも……」
「矢島さんでないと、駄目なんだ」
高橋さんに、言葉を遮るようにして言われてしまった。
「だから、明日の11時には外出する予定でいてくれ。中原には、もう話してあるから大丈夫だ。呼び止めて、悪かったな。それじゃ」
「あの……」
呼び止めようとしたが、ちょうど来たエレベーターに乗って高橋さんは行ってしまった。
視察って……何の視察なの?
私でなければ駄目って?
何が何だか、さっぱり分からない。高橋さんは行ってしまったし、それに……。
警備本部でバッグの中身を見せて外に出ると、気持ちを落ち着かせるために深呼吸をした。
高橋さんに呼び止められたのは、もしかしたら昨日のことを説明してくれるのかという淡い期待を抱いていた。
けれど、それは違っていて……高橋さんは、ひと言もその件には触れなかった。仕事の話だけして、直ぐに行ってしまった。仕事で傍に居る高橋さんと、プライベートの高橋さん。確かに、仕事とプライベートはまったく別物だけれど、高橋さんが何を考えているのか分からない。これだけ近くに居ながら、私は高橋さんの何を見ているんだろう?
「深刻そうな表情だね」
エッ……。
「柏木さん」
「お疲れ」
「お疲れ様です」
振り返ると、柏木さんが後ろに居た。
「どうかしたの?」
「い、いえ、何でもないです。ちょっと、考え事していて」

