「そんなことないですよ。勿論、この刺繍のものだって凄く嬉しいです。でも、何か私には勿体なくて……」
そう説明していると、高橋さんはポケットから小銭入れを出して、中から500円玉を1枚取り出した。
500円玉を、どうするんだろう?
すると、高橋さんがその500円玉を私が膝の上に置いていた小さなガマ口の入った箱から取り出すと、口を開けて中に入っていたペーパーを外し、500円玉を入れてまた口を閉めた。
「これで、ヨシ!」
「高橋さん?」
高橋さんが、ガマ口をまた箱に入れて蓋をした。
「貴ちゃん印も入ったことだし」
「た、貴ちゃんじるしぃ?」
思わず、大きな声を出してしまった。
「そうだ。貴ちゃん印だから、お守り効力大だぞ−」
悪戯っぽく笑いながら、高橋さんはそう言った。
貴ちゃん印だから、お守り効力大って……。
貴ちゃん印だなんて、そんなことを言うような感じには、とても仕事中の高橋さんからは想像もつかない。
「何か、不満か?」
「い、いえ、そんなことないです。あの、ありがとうございます。大切にします」
小さな箱をギュッと両手で握りしめると、それを見た高橋さんが笑っていた。
「さて、明日も仕事だから、そろそろ帰るか。機嫌が直って良かった」
エッ……。
声がさっきより近くで聞こえて、仄かに高橋さんの香りがすると、キスをされていた。
何が起きたのか分からず、固まったまま目を見開いていると、時計を見た高橋さんが、ドアを開けて車から降りて助手席のドアを開けてくれていた。
触れたか、触れないか。あまりにも、一瞬の出来事だった。
「フッ……。シートに根が生えたか?」
「えっ? あっ、す、すみません」
慌てて助手席から降りると、高橋さんがドアを閉めて車道に出て車の往来を見ていた。
「渡るぞ」
「はい」
車道を横断してマンションの前に着いた時、ふと思い出してしまった。
あの交差点で、一緒にタクシーに乗っていった女性のことを。
聞くべきか、今日は聞かずにおこうか。迷っていると、ジャケットのポケットに両手を入れた高橋さんに顔を覗かれた。
「なーに、また考え込んでるんだ?」
うわっ。
ち、近いです。近過ぎですって、高橋さん。
「何だ?」
「ああ、あの……」
でも、何だか聞かないでいた方がいいような気がしてならない。でも、高橋さんに誤魔化しはきかないし……。
「あの……先日、高橋さんが出張に行かれる前日に会われていた女性は……その……どなたなんですか?」
そう説明していると、高橋さんはポケットから小銭入れを出して、中から500円玉を1枚取り出した。
500円玉を、どうするんだろう?
すると、高橋さんがその500円玉を私が膝の上に置いていた小さなガマ口の入った箱から取り出すと、口を開けて中に入っていたペーパーを外し、500円玉を入れてまた口を閉めた。
「これで、ヨシ!」
「高橋さん?」
高橋さんが、ガマ口をまた箱に入れて蓋をした。
「貴ちゃん印も入ったことだし」
「た、貴ちゃんじるしぃ?」
思わず、大きな声を出してしまった。
「そうだ。貴ちゃん印だから、お守り効力大だぞ−」
悪戯っぽく笑いながら、高橋さんはそう言った。
貴ちゃん印だから、お守り効力大って……。
貴ちゃん印だなんて、そんなことを言うような感じには、とても仕事中の高橋さんからは想像もつかない。
「何か、不満か?」
「い、いえ、そんなことないです。あの、ありがとうございます。大切にします」
小さな箱をギュッと両手で握りしめると、それを見た高橋さんが笑っていた。
「さて、明日も仕事だから、そろそろ帰るか。機嫌が直って良かった」
エッ……。
声がさっきより近くで聞こえて、仄かに高橋さんの香りがすると、キスをされていた。
何が起きたのか分からず、固まったまま目を見開いていると、時計を見た高橋さんが、ドアを開けて車から降りて助手席のドアを開けてくれていた。
触れたか、触れないか。あまりにも、一瞬の出来事だった。
「フッ……。シートに根が生えたか?」
「えっ? あっ、す、すみません」
慌てて助手席から降りると、高橋さんがドアを閉めて車道に出て車の往来を見ていた。
「渡るぞ」
「はい」
車道を横断してマンションの前に着いた時、ふと思い出してしまった。
あの交差点で、一緒にタクシーに乗っていった女性のことを。
聞くべきか、今日は聞かずにおこうか。迷っていると、ジャケットのポケットに両手を入れた高橋さんに顔を覗かれた。
「なーに、また考え込んでるんだ?」
うわっ。
ち、近いです。近過ぎですって、高橋さん。
「何だ?」
「ああ、あの……」
でも、何だか聞かないでいた方がいいような気がしてならない。でも、高橋さんに誤魔化しはきかないし……。
「あの……先日、高橋さんが出張に行かれる前日に会われていた女性は……その……どなたなんですか?」

