新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「何がだ?」
「えっ? あ、あの、自分の中で解決することが出来たので、それで……」
「それなら聞くが……」
そう言い掛けた高橋さんは、唇をなぞっていた指を離すと、その手で私の顎を親指と人差し指で挟んだ。
「何故、駐車場に来たんだ? 俺に、用事があったからなんじゃないのか?」
高橋さん。
「今、俺は、お前の逃げ道をどんどん狭めてしまってるかもしれない。だが、言いたいことは、伝えなければ始まらない。伝えたいことは、心を開かない限り何も伝わらない」
心を開かない限り何も伝わらない。
高橋さんに、本当は言いたかった? 柏木さんに言われて、高橋さんに伝えたかったから駐車場に行ったんじゃ……。高橋さんと、話をしたかったから。だったら、やっぱり……。
「あの……高橋さんは、こういう時……こういう時っていうか、仕事以外のプライベートの時間に私に接して下さるのは……」
ああ。もう緊張し過ぎて、どうにかなりそう。高橋さんの顔は、間近に迫っているし……でも、言うしかない。
「上司だからですか? 上司としてですか? こ、これも、仕事だと思っているんですか?」
一気にまくし立てるように言い切った途端、緊張し過ぎて恥かしさよりも脱力感に覆われ、気を張っていた肩がガクッと落ちた。
「……」
けれど、高橋さんは何も応えてくれない。きっと、呆れて言葉も出て来ないのかもしれない。とても、社会人に言う台詞とは思えないもの。
「すみません。社会人なのに……いい歳して新入社員でもないのに、こんなくだらないこと言って」
高橋さんの出張前から騒いだり、帰ろうとしていた高橋さんを駐車場まで追いかけたり……。何事かと思えば、こんなくだらないことだったなんて。高橋さんにしてみたら、いい迷惑だろうし、呆れて何も言えないも当たり前だと思う。やっぱり、言わなければ良かった。こんなこと、面と向かって聞く方がおかしいもの。
「勤続年数や歳だからとラインを引けるほど、お前は大人なのか?」