新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

地下2階に着いてエレベーターを下りたところで、半分以上照明を間引いてある暗い駐車場で光る車のヘッドライトが見えて、駐車場の床に走るタイヤの設置音が響いていたので、走って駐車場に飛び出すと、駐車場出口に向かって外周を走っている車のテールランプが見えた。
待って、高橋さん。
「お願い……」
けれど願いは届かず、車のテールランプはスロープを上ってみるみるうちに見えなくなってしまった。
高橋さん。お願いって、言ったのに。
「何が、お願いなんだ?」
エッ……。
驚いて振り返ると、高橋さんが後ろに立っていた。
「あ、あの、帰ったんじゃ……」
また慌てて後ろを見たが、駐車場内は真っ暗で、先ほどの車のエンジン音すらしていない。
「これから帰るところだが?」
「じゃ、じゃあ、さっき出て行った車は……」
「出て行った車? ああ、それは多分、副社長の車じゃないか? さっき、エレベーターで一緒になったから」
そうだったんだ。あの車は、副社長の車だったんだ。
でも高橋さんは、どうしてまだ此処に?
「副社長に、何か用事でもあったのか?」
「と、とんでもないです。 副社長にお話なんて、滅相もないです」
「ふーん……。じゃあ、何で此処に居るんだ?」
高橋さん。
それは、こっちの台詞ですって。
「た、高橋さんこそ、もうてっきりお帰りになってしまったとばかり思ってました」
「なってしまった?」
ハッ!
つい、本音が……。
「俺に用事だったのか?」
どうしよう。バレてる……高橋さんに。
「あ、あの……」
「ちょっと、此処で待ってろ」
エッ……。
高橋さんはそう言うと、エレベーターホールを出て駐車場に入って行ってしまった。すると、ほどなくして高橋さんの車のエンジンが掛かった音がした。
ああ、この音だった。高橋さんの車のエンジン音。
さっき行ってしまった車の音とは、やっぱりどことなく違う気がする。
チラッと、エレベーターホールから駐車場を覗くと、高橋さんの車がこちらに向かって走ってくるのが見えた。そして、エレベーターホールの前で車を停めると、高橋さんが運転席から降りてきて助手席のドアを開けた。
「乗って」
「でも……あの、高橋さんにお話が……」
「いいから。話なら、車の中で聞く。それとも、此処でないとまずいのか?」
「いえ、それは……」