「お疲れ様です!」
退社していく人の波の中で、何となく気配というか何かを感じて振り返ると、高橋さんと中原さんが警備本部の前に立っていた。
「売り掛けの鍵は、やはりもう返ってましたね。売り掛けのパソコンの電源落としてきて、正解でしたよ。担当者が忘れたんですね。高橋さん」
「そうだな」
「それじゃ、お疲れ様でした」
「お疲れ様」
「あれ? 矢島さん。お疲れ様」
「中原さん。お疲れ様でした」
中原さんは、優しく手を振って挨拶してくれた。
「高橋さん。昼間は、すみませんでした」
エッ……。
振り返って見ると、青木さんが高橋さんを呼び止めてお辞儀をしている。
「いや……」
「なので、勤務時間外になりましたから、これから飲みに行きます」
嘘。
また、何で高橋さんに言うの?
「お疲れ様」
高橋さんはそう言うと、エレベーターの方に向かって歩き出していた。
どうして青木さんは、高橋さんにいちいち……。
「まさに、泰然自若だな」
柏木さん?
「あの人に、ぴったり当てはまる」
泰然自若。
「高橋さんって、何考えてるか分からないよなあ」
「矢島さん」
「えっ?」
柏木さんが青木さんに背を向けるように私の体勢を変えると、下を向きながら小声で話し出した。
「いいの? 追いかけなくて」
エッ……。
「何となく、分かったから」
「柏木さん……」
「時も、心も逸すると後悔する。これ、高橋さんが男子の新人教育の時に話してくれた言葉なんだ。」
「高橋さんが?」
「何事も損得勘定なしに、当たってみなければ分からない。何もしないまま後悔するよりは、いいってこと」
時も、心も逸すると後悔する。
「高橋さんらしいよな」
「あの……」
「青木のことは、俺に任せて」
「柏木さん」
「トイレ?」
ハッ?
「青木。矢島さんがトイレに行きたいみたいだから、先に出て待ってよう」
「あっ。分かった」
柏木さんが、声に出さずに 「行って」 と言ったのが分かり、背中を押されてエレベーターの方へと歩き始めたが、途中から走っていた。
今からエレベーターに乗って行ってしまった高橋さんを追いかけて、間に合うだろうか?
やっと来たエレベーターに乗って地下2階を押してドアを閉めたが、その時間が長く感じられて気ばかりが焦っている。
高橋さんに今更、何を話せばいいんだろう? これ以上、打ちのめされたくない気持ちと怖さもあって、膝がガクガクしていた。
退社していく人の波の中で、何となく気配というか何かを感じて振り返ると、高橋さんと中原さんが警備本部の前に立っていた。
「売り掛けの鍵は、やはりもう返ってましたね。売り掛けのパソコンの電源落としてきて、正解でしたよ。担当者が忘れたんですね。高橋さん」
「そうだな」
「それじゃ、お疲れ様でした」
「お疲れ様」
「あれ? 矢島さん。お疲れ様」
「中原さん。お疲れ様でした」
中原さんは、優しく手を振って挨拶してくれた。
「高橋さん。昼間は、すみませんでした」
エッ……。
振り返って見ると、青木さんが高橋さんを呼び止めてお辞儀をしている。
「いや……」
「なので、勤務時間外になりましたから、これから飲みに行きます」
嘘。
また、何で高橋さんに言うの?
「お疲れ様」
高橋さんはそう言うと、エレベーターの方に向かって歩き出していた。
どうして青木さんは、高橋さんにいちいち……。
「まさに、泰然自若だな」
柏木さん?
「あの人に、ぴったり当てはまる」
泰然自若。
「高橋さんって、何考えてるか分からないよなあ」
「矢島さん」
「えっ?」
柏木さんが青木さんに背を向けるように私の体勢を変えると、下を向きながら小声で話し出した。
「いいの? 追いかけなくて」
エッ……。
「何となく、分かったから」
「柏木さん……」
「時も、心も逸すると後悔する。これ、高橋さんが男子の新人教育の時に話してくれた言葉なんだ。」
「高橋さんが?」
「何事も損得勘定なしに、当たってみなければ分からない。何もしないまま後悔するよりは、いいってこと」
時も、心も逸すると後悔する。
「高橋さんらしいよな」
「あの……」
「青木のことは、俺に任せて」
「柏木さん」
「トイレ?」
ハッ?
「青木。矢島さんがトイレに行きたいみたいだから、先に出て待ってよう」
「あっ。分かった」
柏木さんが、声に出さずに 「行って」 と言ったのが分かり、背中を押されてエレベーターの方へと歩き始めたが、途中から走っていた。
今からエレベーターに乗って行ってしまった高橋さんを追いかけて、間に合うだろうか?
やっと来たエレベーターに乗って地下2階を押してドアを閉めたが、その時間が長く感じられて気ばかりが焦っている。
高橋さんに今更、何を話せばいいんだろう? これ以上、打ちのめされたくない気持ちと怖さもあって、膝がガクガクしていた。

