新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「い、いえ、そんな……」
「何だ?」
どうしよう。
仕事の話じゃないのに、高橋さんにわざわざ席まで来て貰ってしまった。
「あの……」
でも、ここで言わないと、もう言えるチャンスはないかもしれない。
慌てて席から立って、高橋さんを見た。
「あの……今日、お時間ありますか?」
「仕事が終わってからか?」
「は、はい」
「今日は、無理だ」
エッ……。
今日は、無理なんだ。そうなんだ……。
「そ、そうですか。そうですよね?」
「悪いな」
「い、いえ、とんでもないです。いきなり言って、すみませんでした」
席に戻っていく高橋さんの背中を見ながら、そう言って慌ててお辞儀をしていた。
「陽子からメールがきたから、てっきりハイブリッジと話が出来て、今日辺りは食事にでも行って暫く会えないから盛り上がってめでたし、めでたしかと思ってたんだよ。何? それじゃ、ハイブリッジと話は出来なかったの?」
「ううん。話っていうか……。やっと話せたのは、今日だったの」
そう言うと、まゆみは目を丸くしたが、そのまま黙って話の続きを聞いてくれた。
「それで、今日、お時間ありますか? って、聞いたんだけど……」
「けど?」
「今日は、無理だって言われちゃった」
「ハッ? それだけ?」
「う、うん。それだけって?」
高橋さんは、とりつく島もないくらい即答だった。
「だって、そうでしょう? 今日は無理だけど、出張から帰ってきたら必ず聞くからとか、今夜電話するとか、他にも話をする手立ては幾らでもあるはず。それなのに、そのひと言だけなんておかしいでしょう?」
まゆみ……。
「このまゆみ様の目から見ても、アヤツは相当遊んできてるはずなのに、女子の気持ちがこれっぽっちも分かってないな」
「でも、出張前日に言い出した私もいけないの。高橋さんにだって、都合があるんだし……」
「それは、確かに分かるけどさ。だけど、言い切るその態度が許せんって」
高橋さん。きっと忙しかったから準備とか、まだ何もしていないのかもしれない。だから、準備やいろいろやることがあったのかも。