エッ……。
高橋さん。
「あら、高橋さん。会議、お疲れ様ですぅ」
何処から声を出しているんだろう? 今まで私と話していた声とは、まるで別人のよう。
「どうも」
それ以上、高橋さんは何も言わず、机の上に貼ってある付箋を剥がしながら離席中にあった伝言メモを見ていた。
「高橋さん。まだ、この子使ってたんですか?」
「本当に、まったく……。いい加減に見切りつけて、私を経理部長に推して下さいよぉ」
何だか、酷い言われようだな。
「生憎……」
エッ……。
高橋さんの声が聞こえたので、見ると伝言メモを一纏めにして机の上にポンと高橋さんは置くと、ペンを持ちながら椅子を回転させて、横に立っている紺野さんと黒沢さんの方を見た。
今の一連の動作を見ていてもそうだけど、どうして高橋さんがすると何でも格好いいんだろう? 格好良く見えてしまうというか……。
「うちは、このメンバーがベストなので、崩すつもりはないですよ」
「まあ、何故ですの? 少数精鋭でしたら、私の方が絶対この方より仕事は出来ると自負してますのに」
この方っていう言い方が、紺野さんが笑いながら言ったせいもあってか、不快に聞こえた。私って、何だかどうしようもないみたいだな。経理に、向いてないのかもしれない。
「いえいえ、そんなに仕事が出来る高給取りの紺野さんに来て頂くとなると、人件費が上がってしまいますから」
「……」
やんわりとかわした高橋さんのさり気ない話術に、紺野さんは言い返す術もなく、眉間に皺を寄せながら唇をギュッと噛みしめていた。
「そちらの書類、お預かりさせて頂きます」
「あっ、すみません。よろしくお願いします」
「内容を確認して、ご連絡します」
そう言って、紺野さんが抱えていた書類を高橋さんは受け取ると、また机の方に椅子の向きを変えた。
「あの……」
「まだ、何か?」
「ああ……えっと……いいえ。よろしくお願いします」
紺野さんは何か言いたそうだったが、高橋さんのにべもない態度に閉口すると私の席の後ろをわざわざ通った。
「覚えてなさい」
エッ……。
そして、去り際にそんなことを耳打ちされた。
な、何だろう。何で?
何もしてないと思うんだけれど、何故?
でも、少し怖いな……。
そして、その翌日から紺野さんとその取り巻きや、黒沢さんとその取り巻きの風当たりが今まで以上に厳しくなった。
何をされるというわけではないが、すれ違いざまに嫌味を言われたり、エレベーターで一緒になったりすると大きな声で、あること、ないことを言われて問い詰められるので、その場に居合わせて見たり聞いたりした人からも変な目で見られてしまい、それが噂となってあっという間に社内に広まっていった。
通路を歩いていても、社食に行っても周りの視線が痛い。ひそひそとこちらを見ながら話している声が聞こえてくる。
「あの子でしょ? 高橋さんの足を引っ張ってる子って」
「いい根性してるわよね。大して可愛くもないくせに……」
後ろ指を指されるようなこと等、していないのに。社内に居ると、何故か、肩身の狭い思いをしてしまう。
きっと、高橋さんの耳にも入っているかもしれない。こんな噂を立てられて、恐らく迷惑してるだろうな。そう思うと、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。
高橋さん。
「あら、高橋さん。会議、お疲れ様ですぅ」
何処から声を出しているんだろう? 今まで私と話していた声とは、まるで別人のよう。
「どうも」
それ以上、高橋さんは何も言わず、机の上に貼ってある付箋を剥がしながら離席中にあった伝言メモを見ていた。
「高橋さん。まだ、この子使ってたんですか?」
「本当に、まったく……。いい加減に見切りつけて、私を経理部長に推して下さいよぉ」
何だか、酷い言われようだな。
「生憎……」
エッ……。
高橋さんの声が聞こえたので、見ると伝言メモを一纏めにして机の上にポンと高橋さんは置くと、ペンを持ちながら椅子を回転させて、横に立っている紺野さんと黒沢さんの方を見た。
今の一連の動作を見ていてもそうだけど、どうして高橋さんがすると何でも格好いいんだろう? 格好良く見えてしまうというか……。
「うちは、このメンバーがベストなので、崩すつもりはないですよ」
「まあ、何故ですの? 少数精鋭でしたら、私の方が絶対この方より仕事は出来ると自負してますのに」
この方っていう言い方が、紺野さんが笑いながら言ったせいもあってか、不快に聞こえた。私って、何だかどうしようもないみたいだな。経理に、向いてないのかもしれない。
「いえいえ、そんなに仕事が出来る高給取りの紺野さんに来て頂くとなると、人件費が上がってしまいますから」
「……」
やんわりとかわした高橋さんのさり気ない話術に、紺野さんは言い返す術もなく、眉間に皺を寄せながら唇をギュッと噛みしめていた。
「そちらの書類、お預かりさせて頂きます」
「あっ、すみません。よろしくお願いします」
「内容を確認して、ご連絡します」
そう言って、紺野さんが抱えていた書類を高橋さんは受け取ると、また机の方に椅子の向きを変えた。
「あの……」
「まだ、何か?」
「ああ……えっと……いいえ。よろしくお願いします」
紺野さんは何か言いたそうだったが、高橋さんのにべもない態度に閉口すると私の席の後ろをわざわざ通った。
「覚えてなさい」
エッ……。
そして、去り際にそんなことを耳打ちされた。
な、何だろう。何で?
何もしてないと思うんだけれど、何故?
でも、少し怖いな……。
そして、その翌日から紺野さんとその取り巻きや、黒沢さんとその取り巻きの風当たりが今まで以上に厳しくなった。
何をされるというわけではないが、すれ違いざまに嫌味を言われたり、エレベーターで一緒になったりすると大きな声で、あること、ないことを言われて問い詰められるので、その場に居合わせて見たり聞いたりした人からも変な目で見られてしまい、それが噂となってあっという間に社内に広まっていった。
通路を歩いていても、社食に行っても周りの視線が痛い。ひそひそとこちらを見ながら話している声が聞こえてくる。
「あの子でしょ? 高橋さんの足を引っ張ってる子って」
「いい根性してるわよね。大して可愛くもないくせに……」
後ろ指を指されるようなこと等、していないのに。社内に居ると、何故か、肩身の狭い思いをしてしまう。
きっと、高橋さんの耳にも入っているかもしれない。こんな噂を立てられて、恐らく迷惑してるだろうな。そう思うと、何だか申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

