新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

高橋さんが私の部屋のキッチンに立っているなんて、何だか夢みたい。
すると、高橋さんがロールキャベツの入っているお鍋の蓋を開けて中を覗くと、こちらを振り返った。
「お前、何個食べられる?」
エッ……。
「あの、私は1個で……」
「1個? 1個かよ」
1個じゃ、駄目なのかな?
「……ったく……」
そう言って、高橋さんはまた向こうを向いてしまったが、何か言っているみたいだったので、よく聞こえなかったからキッチンに私も向かった。
「あの……」
「ん?」
高橋さんが、火加減を見ながら返事をしてくれた。
「あの、1個じゃ駄目ですか?」
高橋さんの後ろに立って恐る恐る尋ねると、いきなり高橋さんがこちらを向いたので思わず後ずさりしてしまった。
けれど、高橋さんの目は笑っていたのでホッとした。
「もう時間も遅いし、無理して気持ち悪くなっても困るしな。お前には、ちょうどいいんじゃないか?」
高橋さんは少し屈むと、左手で私の鼻を摘んだ。
「ングッ……」
「いつ見ても、本当にちっこい鼻だな」
「ダガハジダン。イダイデズ……」
「ハハハッ……。いいから、座ってろ」
高橋さんに無理矢理椅子に座らされて大人しく待っていると、食器のある位置を聞かれて座ったまま応えていたが、程なく高橋さんがロールキャベツとご飯と作って置いたサラダを冷蔵庫から出してきてくれた。
「美味そう」
そう言って貰えると、嬉しい。
「さあ、食べよう」
「はい」
「いただきます」
「いただきます」
高橋さんと、私の部屋で一緒にご飯が食べられるなんて……。
「美味い」
「そうですか? 良かった」
「お前さ、何個作ったんだよ?」
「えーっと……キャベツ1個分です」
「……」
な、何か、まずかった?
「具合が悪いっていうのにサラダまで作って、まったくお前は」
「ごめんなさい……」