新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

高橋さん。遅いな……。まさか、途中で事故にでも遭ってないよね?
うわっ。
すると、置き時計と見比べた時に、ついテーブルの上に置いてしまっていた携帯がけたたましい音で振動し始めて、驚きながら携帯を掴んで画面を見ると、高橋さんの名前が表示されていたので急いで電話に出た。
「もしもし」
「下に着いた。インターホン鳴らすから、開けてくれ」
「あっ、はい」
高橋さんがそう言って電話を切った途端、直ぐにインターホンが鳴って、画面を見ると高橋さんが映っていたので、急いで受話器を取った。
「はい。今、開けます」
オートロックの施錠を外すと、中に入った高橋さんの姿が画面から消えた。
どうしよう……。来ちゃう、高橋さんが。
別に悪いことをしているわけでもないのに、物凄く緊張して玄関の前でインターホンが鳴るのをドキドキしながら待っていると、通路を歩く靴音が段々大きくなって近づいてきているのが分かった。
高橋さんの足音。
その足音が止まると同時にインターホンが鳴ったので、急いでドアチェーンと施錠を外してドアを開けると、目の前に高橋さんが立っていた。
高橋さん……。
別に驚くことではないのに、緊張からか目が合った途端、声が出なかった。
「何て顔してんだ? お前、ちゃんと俺だって確認してから開けたのか?」
「えっ? いえ、あの……そ、それは……」
「ちゃんと、誰だか確認してから開けないと」
「はい。すみません」
言われてしまった。
すっかりそんなことも忘れて、高橋さんだと確信して開けてしまっていたから。
「具合、どうだ? だいぶ、昼間より顔色は良くなったみたいだな」
ち、近過ぎですって、高橋さん。
中腰になった高橋さんに顔を覗き込まれたが、近過ぎて思わず体を引いてしまった。
「は、はい。お陰様で、もう大丈夫です。すみません、ご心配お掛けしまして」
「無理はするな。これからも、具合の悪い時は遠慮なく言えよ?」
「はい。ありがとうございます」
高橋さんは、やっぱり優しいな。
だけど、それは上司だから……勘違いしたら、いけないんだ。
「少しは、眠れたか?」
「えっ? あっ……は、はい」
さっき、ウトウトしていたのは確かだから。