「もういいのよ、まゆみ。私の思い違いだったんだから」
結局、 『後で話がある』 と言っていた高橋さんだったけれど、忙しそうでそれどころではなさそうだったから、先に退社してきてしまった。
「そうだ。金曜日だし、飲みに行こうか?」
まゆみ……。
「ありがとう。でも、今飲んだらきっと酷いことになりそうだから、今日はやめておくね」
「そうか。そうだよね。美味しいお酒の方が飲んでいて楽しいし、悪酔いしないしね。じゃあ、もうハイブリッジのことは置いといて、気持ち切り替えて新しい出逢いを求めてみるとか。どう?」
まゆみが、目をキラキラさせながら身を乗り出すようにして言っている。
「ま、まゆみ。私、まだそんな気分には……」
とても、今はまだそんな気持ちにはなれない。
「何、言ってるの? そうやって、構えちゃうから駄目なのよ。軽い気持ちで、遊びに行く程度に考えていればいいの。お見合いじゃ、あるまいし。気晴らしに、友達同士で遊びに行くと思えばいいんじゃない?」
「でも……」
「面子は、私に任せて。時間的に、明日、明後日はもう無理だけど、来週末なら集められると思うから。陽子は、少し発散した方がいいよ」
「ちょ、ちょっと、待ってよ、まゆみ。私、困る」
本当に、今はとても遊びに行く気分にもなれないのに。
「いいから、いいから。それじゃ、連絡するねえ」
まゆみは、来週末に遊び行く計画を練ることに、やる気満々で帰って行った。
困ったな。
まだ、私の心の中は、高橋さんでいっぱいなのに……。
家に帰って、明日は休みだと思ったら急に疲れが出たのか、お風呂に入って湯船に浸かっていると少し寝てしまっていたようで、慌てて出て髪の毛を乾かしながら、ふと昼間の高橋さんの後ろ姿を思い浮かべていた。
私は、高橋さんの背中をずっとこの先も見ているだけしか出来ないんだ。その背中に触れることは、多分、ないんだろうな。
何故、休みはあっという間に、過ぎてしまうんだろう。そんないつもと同じ思いを味わいながら月曜日の気怠い朝を迎え、先週よりも重たい気持ちのまま会社に向かう。
電車の車窓から見慣れた景色を目で追いながら、今まで通り、上司と部下の関係には何ら変わりないんだからと、何度も言い聞かせていた。
「おはようございます」
「おはよう」
「矢島さん。おはよう」
変わらない朝の光景。
多くを望んじゃいけないんだ。高橋さんの部下でいられる、この空間を大切にしなければ。高橋さんは、20日から出張に行ってしまうのだから。
結局、 『後で話がある』 と言っていた高橋さんだったけれど、忙しそうでそれどころではなさそうだったから、先に退社してきてしまった。
「そうだ。金曜日だし、飲みに行こうか?」
まゆみ……。
「ありがとう。でも、今飲んだらきっと酷いことになりそうだから、今日はやめておくね」
「そうか。そうだよね。美味しいお酒の方が飲んでいて楽しいし、悪酔いしないしね。じゃあ、もうハイブリッジのことは置いといて、気持ち切り替えて新しい出逢いを求めてみるとか。どう?」
まゆみが、目をキラキラさせながら身を乗り出すようにして言っている。
「ま、まゆみ。私、まだそんな気分には……」
とても、今はまだそんな気持ちにはなれない。
「何、言ってるの? そうやって、構えちゃうから駄目なのよ。軽い気持ちで、遊びに行く程度に考えていればいいの。お見合いじゃ、あるまいし。気晴らしに、友達同士で遊びに行くと思えばいいんじゃない?」
「でも……」
「面子は、私に任せて。時間的に、明日、明後日はもう無理だけど、来週末なら集められると思うから。陽子は、少し発散した方がいいよ」
「ちょ、ちょっと、待ってよ、まゆみ。私、困る」
本当に、今はとても遊びに行く気分にもなれないのに。
「いいから、いいから。それじゃ、連絡するねえ」
まゆみは、来週末に遊び行く計画を練ることに、やる気満々で帰って行った。
困ったな。
まだ、私の心の中は、高橋さんでいっぱいなのに……。
家に帰って、明日は休みだと思ったら急に疲れが出たのか、お風呂に入って湯船に浸かっていると少し寝てしまっていたようで、慌てて出て髪の毛を乾かしながら、ふと昼間の高橋さんの後ろ姿を思い浮かべていた。
私は、高橋さんの背中をずっとこの先も見ているだけしか出来ないんだ。その背中に触れることは、多分、ないんだろうな。
何故、休みはあっという間に、過ぎてしまうんだろう。そんないつもと同じ思いを味わいながら月曜日の気怠い朝を迎え、先週よりも重たい気持ちのまま会社に向かう。
電車の車窓から見慣れた景色を目で追いながら、今まで通り、上司と部下の関係には何ら変わりないんだからと、何度も言い聞かせていた。
「おはようございます」
「おはよう」
「矢島さん。おはよう」
変わらない朝の光景。
多くを望んじゃいけないんだ。高橋さんの部下でいられる、この空間を大切にしなければ。高橋さんは、20日から出張に行ってしまうのだから。

