新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

辛辣な棘のある言葉が、突き刺さる。
けれど、高橋さんの何気ない動作はやっぱりジェントルマンで、いつも必ずエレベーターに私を先に乗せてくれて自分は後から乗る。
エレベーターに乗りながら、高橋さんがさっき社長に言った言葉が気になって仕方がない。
社長の前で、私を庇ってくれたことは本当に嬉しかった。まさか、あんな風に考えていてくれていたなんて、思いも寄らなかったから。けれど、それは上司の立場としての対応で……。
社長に、あんな風に励まして頂いたけれど、高橋さんは、上司として私のことを気に掛けてくれているだけであって、高橋さん個人としては、きっと……。
諦めるならが、早い方がいいよね。
ハッキリ言ってもらった方が諦めもついて、きっとスッキリ出来るはず。
「あの……」
「ん?」
次の会議で使う資料なのか、高橋さんは持っていた書類をペラペラと捲って見ていたが、私の声に顔を上げてくれた。
「さっき、社長に仰っていたことは、あの……本当ですか?」
弱虫な私。
ハッキリ聞けずに、中途半端な言い回しになってしまっていた。
「他意はない。本心だ」
高橋さん……。
迷うことなく、ハッキリと言われてしまった。
やっぱり高橋さんは、まだミサさんのことが忘れられないんだ。高橋さんが、取り戻したかった人生の忘れ物。それは、ミサさんとの恋愛だった。だから、迷いもなく言い切るように私にそう告げた。問い返す猶予等、与える隙もないぐらいに……。
それなのに、私ったら……。
「馬鹿みたい……」
「何がだ?」
「えっ?」
無意識のうちに、声に出していたらしい。
「あっ。いえ、何でもないです」
高橋さんの顔をまともに見られなくて、下を向いたまま応えていた。
「後で、話がある」