新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

理想を追い求めすぎてもいけなくて、それが崩れた時の、落胆と弊害が激しすぎるから。とはいえ、私はその理想以前に、目先のことで精一杯で……。
翌朝、高橋さんと一緒に部長の席に向かった。
「おはようございます。この度は、ご迷惑をお掛けしまして申し訳ありませんでした」
高橋さんが深々と頭を下げたので、それに習って私も頭を下げる。
「いやいや。まあ、気にしないでいい。頭を上げてくれ。それで、書類は?」
部長は、高橋さんの脇に抱えられている書類に目をやった。
「はい。こちらです。念のため、お手数ですが目を通して頂けますと幸いです。それから、こちらがお借りしていた原本です」
高橋さんが、部長に書類を渡した。
「ありがとう。助かったよ」
部長は、安堵したように顔を綻ばせている。
もう1度、お辞儀をして席に戻ろうしたら、目の前に黒沢さんが立っていた。
「流石、高橋さんですね。短時間で仕上げていらっしゃるなんて、感服致しましたわ」
そう言い終わると、黒沢さんは何故か私を見た。
「ご心配をお掛けしました。矢島さんと中原と分担して打ち出したので、早く終わったんです」
「分担して? 高橋さんも中原さんも、大変ですねえ?」
見下すような黒沢さんの視線が、私の足下から段々上がってきて良い気持ちではなかった。
「何でしたら父に頼んで、問題児のこの方を外して頂きましょうか?」
うっ。
外すって、私のことだ。
「その必要は、ないでしょう」
「何故ですか? 会社のためにも、良くないですよ。私が父に言えば、二つ返事で動いてくれますのに」
私は、会社をクビ? 左遷?