新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「誰でも、間違えることはある。それが数字の誤差だったり、言葉遣いだったり。些細なことでも、ミスはミスだ。だが、それを未然に防ぐ努力は怠ってはいけない。集中力が切れていては、ミスも多くなる。例えば、会話しながら計算していたら、まずミスの確立は高いだろう。しかし、防ぎようのない予期せぬミスも必ず発生する。それに対して咎めることは、白い絵の具に黒い絵の具を入れたようなものと一緒だ」
白い絵の具に、黒い絵の具……。
「どうやったところで、元通りの白に戻ることはない。まあ、それに近い色に近づけることは出来るかもしれないけどな。ある意味、それと同じだろう? 起きてしまったことは消せないが、起きる前の状態に限りなく戻すことは出来る。人は、最後まで諦めてはいけないんだ。理想を追い求めれば、きりがない。その描いていた理想を覆された時、人は怒る。壊されたり、怪我されたりするからだ。理想は大事だが、追い求めすぎてもいけない。それが崩れた時の、落胆と弊害が激しすぎるから」
高橋さん……。
「着いたぞ」
エッ……。
「あっ。すみません」
高橋さんの話に聞き入ってしまっていて、景色を見る余裕もないままマンションの前で車が停まるまで気づかなかった。
助手席のドアを開けてくれた高橋さんの顔を、慌てて降りて見上げる。
「送って下さって、ありがとうございました」
「ゆっくり休め。おやすみ」
「おやすみなさい」