新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「辞めたい……」
「何だ?」
辞めたい気持ちが再熱してきて、思わず口走っていた。
「皆さんにご迷惑ばかりお掛けして足を引っ張ってばかりで、思うように上手く行かなくて……こんなことばかり。もう、辞めたいです」
泣きそうになりながら、高橋さんの顔を見た。
「そう……。だったら、辞めたらいい」
高橋さん……。
「辞めたいんだろう? 俺は、とめない」
高橋さんに言い切られてしまい、返す言葉がない。
でも、何だろう?
見放されるようにそう言われて、何となく失望感でいっぱいになっているこの感情は、いったい何?
高橋さんに、慰留してもらえると思っていた? 
それを望んでいた? 
辞めたら駄目だと言ってもらって、慰めてくれることを期待していたの? 
だから、こんな気持ちに……。
でも高橋さんは、辞めることに対してとめてくれなかった。
「高橋さんも、私が辞めることを望んでいらっしゃるということですよね」
「……」
高橋さんは無言のまま、私をジッと見ている。
「よく分かりました。それで、決心がつきました。いろいろと、本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした」
本意ではない気持ち。それに気づきながら、高橋さんに何処かでとめて欲しかった思い。哀しさと辛さが入り交じって、お辞儀をしながら涙が出てしまっていた。
悟られないよう、涙を拭わずに机の引き出しからバッグを急いで出した。
「お先に、失礼します」
高橋さん。
ずっと、高橋さんの部下で居たかった。
高橋さんと目を合わせることも出来ずに、歩き始めて事務所を出ようとしていたが、高橋さんは呼び止めてもくれなかった。
馬鹿みたい……。いったい、何を期待していたんだろう?
エレベーターに乗って2階で降りたが、そのまま警備本部には向かわずトイレに寄った。
手を洗いながら、鏡に映る今の自分を見る。
変な顔。
気持ちを落ち着かせようと、鏡の中の自分と向き合った。