新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「そうです。高橋さんも、出席されるんでしょ? だから、もう無理なんですよ。ああ、何と言って部長にお詫びしよう。まったく、あんたが余計なことをしてくれて。人の足ばっかり、引っ張ってるんじゃないわよ。高橋さんも、本当に大変ですね。こんな子には、さっさと見切りをつけて、もっと優秀な社員とチェンジしてもらったらいいのに」
あまりの言われように悲しい気持ちと、自分が犯してしまったミスを考えると、本当のことだけに泣きそうだった。
「もう1度、伺います。明日の10時の会議までに、間に合えばいいんですよね」
「そうですよ。でも、もう無理……」
「この原本、お借りする」
「ハッ?」
「明日の10時までに、間に合わせれば文句ないですね?」
「勿論です。もう、何度も聞かないで下さい。無理な……」
「でしたら、間に合わせますよ。それで、いいですね?」
高橋さん……。
「いいですよ? どうせ、無理だと思いますけど。私だって、今日丸1日掛かったんですから」
「それは、どうですかね? それじゃ、そういうことで。矢島さん。席に戻るぞ」
高橋さんは、そう言うと不適な笑みを浮かべて黒沢さんを見ていた。
エッ……。
「あっ。は、はい。すみませんでした」
黒沢さんに慌ててお辞儀をして、すでに会計の方に向かって歩き出していた高橋さんの後を慌てて追った。
高橋さん。黒沢さんに向かってあんな風に言って……どうするつもりなんだろう?
席に戻って、慌てて高橋さんに頭を下げた。
「申し訳ありません」
「ああ。そんなことは、後、後。今は、こっちが最優先。急いで、2部ずつコピーしてきて」
高橋さんが、経理部長の原本を差し出した。
「はい」