新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

また、1週間が始まった。
昨日、高橋さんとランチを食べて家に着いたのが14時半頃だったので、それから家でのんびり過ごせたお陰で、殆ど旅行の疲れは残っていなかった。
「矢島さん。悪いが、この書類を主計の小黒部長のところに持って行ってくれるか?」
「はい」
高橋さんから書類を受け取って主計担当のデスクに向かうと、生憎、小黒部長は席に居なかったのでデスクの上に置いていっていいものかどうか、小黒部長のデスクの横で迷っていると、アシスタントの黒沢さんに気づかれて声を掛けられてしまった。
「何?」
「あの……。高橋さんから、小黒部長に書類をお渡しするように言われてお持ちしたのですが……」
「そう。じゃあ、そこに置いといて」
置くようにと指をさされた場所は、黒沢さんの直ぐデスク脇の箱だった。
「はい」
言われた通りに、箱に書類を入れた。
「よろしくおねが……うわっ」
お辞儀をして戻ろうとした矢先、足元にあったゴミ箱に躓いてしまい、座っていた黒沢さんを思いっきり押すような感じでぶつかってしまった。
「ああ!」
「す、すみません」
「すみませんじゃないわよ。どうしてくれる? 急になんなのよ。明日、部長が会議で使う書類の打ち出しがやっと終わって保存しようとしていたのに、あんたが急にぶつかって来たから、 【保存】 をクリックするところがずれて 【いいえ】 をクリックしちゃったじゃないの。 もう、どうしてくれるのよ。明日の会議に間に合わないじゃない」
嘘。どうしよう。
「申し訳ありません。ごめんなさい」
あまりの黒沢さんの剣幕と大声に、周りの人達が一斉にこちらを向いた。