新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

将来的にもって……やっぱり高橋さんは……。
「それなら安心だ」
社長は、今の高橋さんのひと言で納得したようで、それはそれで良かったけれど、私の心は複雑だった。高橋さんはお咎め無しのようなので、ホッとしたけれど。だけど……高橋さんは、将来的にも私とは……。
「ご理解頂きまして、ありがとうございます。ですが、1つお願いがございます」
何?
高橋さん。社長に、お願いって……。
「何だね?」
「今回の件に関しまして、今後も何かと尾を引いた場合ですが……」
そこまで言って、高橋さんが私を一瞬見ると、また社長に向き直った。
「矢島さんは、経理に必要な優秀な人材です」
高橋さん?
高橋さんが、社長に何を言おうとしているのか、皆目見当もつかなかった。
会話を交わしながらも、社長を真っ直ぐ見る高橋さんと、高橋さんの視線の奥を探ろうとする社長との攻防をただ横から見ていることしか出来ないでいる。
「高橋君。また、何か先を読んで言っているのかね?」
社長は苦笑いを浮かべながら、高橋さんとの会話に距離を置いて、その場の空気を和らげるかのように、ソファーの背もたれに背中を押しつけた。
「恐れ入ります。お察しが早いですね。先ほども申し上げました通り、今回の件に関しましては、すべて私の責任でございます」
ちょ、ちょっと、待って。
高橋さん。何? 
どういうこと?
「万が一の場合、その際は、私がいかなる処分も受ける所存でございます。支社、他部署 何処にでも辞令、若しくは辞表と仰るのでしたら……」
そこまで高橋さんが言い掛けたところで、黙ったまま社長が手で制した。
何で? 何で、高橋さんが異動しなくちゃいけないの? まして、辞表だなんて……どうして?
「相変わらず、先を読むのが早いな。今、高橋君に居なくなってもらっては困る。大事な我が社の逸材だ。万が一、そのような不穏な動きがあったとしたら、その時は人事に交渉しろと?」
社長はそう言って、私をチラッと見た。