新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「仁。携帯の簡単で難しいアドレスで、アドグジムってなんだか分かるか?」
「アドグジム?」
「そう。アドグジム」
あっ……。
まゆみが前に言っていた、アドレスのことだ。
「簡単で難しいアドレス、アドグジム……」
仁さんは、携帯の画面を開くと何やら操作を始め、暫く考えていた。
「アドグジム……。ああ、そうか」
仁さん。分かったのかな?
「アドグジム」
そう言うと、仁さんは高橋さんの方に自分の携帯画面を向けた。
「メールを作成する時に、携帯のテンキーでアドレスを直接入力する場合、アルファベットはabc、defの一括りの順でキーボタンが並んでいるから、それを順番に1回ずつ打っていくと……」
仁さんが言ったとおりに、黙って高橋さんが携帯のテンキーを操作した。
「a.d.g.j.m。 adgjm……アドグジム。そういうことか……なるほどね」
淡々と高橋さんが、仁さんに言われたとおりにテンキーを操作して納得したみたいで、直ぐに私にも教えてくれた。
本当だ。
「仁さん。凄いです。私、全く分からなかったです」
「偶々、閃いただけ」
「陽子ちゃん。仁は、発想と閃きだけが売りの仕事なんだから、当然なんだよ」
発想と閃きだけが売りって……。
「何を言ってるんだか。白衣野郎が」
仁さん。白衣野郎って……。
「ハッ? 失礼だな。神聖な白衣を、何だと思ってる」
「白衣脱げば、ただの人だろう?」
高橋さん。ただの人って……。
「白衣を着れば、God Hand。脱げば、雑踏にまみれる一般人。それが売りなんだから、いいんだよ。正義のヒーローは、普段は素性を隠すのが常。そういう貴博だって、鉄の塊で売ってるくせに」
て、鉄の塊って……。