新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「さて、貴ちゃん」
うっ。
明良さんの言葉に反応して、思わず下を向いた。
明良さんに声を掛けられたのに、高橋さんはそれを無視して立ち上がると、コーヒーのお代わりをカップに注いでいる。
「ふーん……」
すると、明良さんも後を追うように立ち上がって、コーヒーをカップに注いでいる高橋さんの顔を横から覗き込んだ。
「さっきから、何だよ? 鬱陶しいから、朝から引っ付くな」
居ない間にそんな話をしていたこと等、全く知らない高橋さんは、怪訝そうな顔を明良さんに向けている。
「へえー……」
「だから、何だよ?」
明良さんは、まだ高橋さんにまとわりついていて、それを見ているだけで何も出来ない私の心臓はパンクしてしまいそうなぐらい、どんどんヒートアップしていく。
チラッと仁さんを見たら、普通に何事もなかったように煙草を吸いながらコーヒーを飲んでいて、私の視線に気づいたのか、仁さんがこちらを見て微笑んでくれると、立っている高橋さんと明良さんを気にしながら口パクで、 「大丈夫」 と言ってくれていた。
そんな仁さんの言葉にも、余裕がなくて首を傾げて苦笑いしか出来ない。
「さーて、朝ご飯でも作るかな。陽子ちゃん。手伝ってね」
エッ……。
「あっ。は、はい」
明良さんは、今まで高橋さんに引っ付いていたのに、こちらを向くとテキパキと言い出した。
「仁と貴博は、悪いけど次の人用に2階のシーツを新しいものに換えてきてくれよな」
「了解」
仁さんが、コーヒーを一気に飲み干してシンクの中に飲み終えたカップを置いた。