新そよ風に乗って ④ 〜焦心〜

「ええーっ?」
「何が?」
「そうなの?」
「さあ……」
「聞いてないし」
「言ってないし」
「何で?」
「大学の時の話しだし」
「ふーん。で? そうだったの?」
ハッ!
まさか?
も、もしかして……。明良さんは、この話を知らなかったの?
何だか、仁さんに悪いことしちゃった。
高橋さんにも……。
「貴博。そんなこと言ったんだ」
仁さんが、そう呟いた。
仁さんに、昔のことを思い出させてしまったのかな。そうだとしたら……やっぱり言わない方が、良かったのかもしれない。
「陽子ちゃん。その話は……正確に言うと、違うんだよ」
「えっ……。違うんですか? でも、高橋さんがそう言……」
「貴博は、あの時のことを今でも責任感じていて、陽子ちゃんにそう言ったのかもしれないけど、本当は……あれは、貴博のせいじゃないんだよ」
仁さんが言葉を遮って、私に諭すように言った。
「最初から……というか、俺と付き合い始めた時から、その子は貴博狙いだったんだよ」
嘘……。
「俺も、そのことには薄々気づいていたけど、知らないふりをしてた。それで、何かにつけてその子が貴博にまとわりついて……。あの頃、貴博はドロップアウトしてたから。来るもの拒まずで、受け入れたわけ」
そんな……。来るもの拒まずで、受け入れたって……どういうこと? 高橋さんと仁さん。本当のことを言っているのは、どっちなんだろう? まるで分からない。
「仁も高校の時からモテたけど、貴博は本当にあの頃、とんでもなくモテてたからなあ……。俺は、お勉強が忙しくって、参考書とレポートがお友達で直向きな時間を過ごしてたけどね」
明良さんは医学部だったから、きっと忙しかったんだろうな。だから、この話も知らなかったのかもしれない。それなのに、話しちゃって……。後で、仁さんに謝らなくちゃ。
「それで、結果的に俺と付き合ってると知っていて、貴博はその子と遊んだ。まあ……きっと彼奴のことだから、そんな軽い女だと分かった以上、もう俺とは付き合わせられないとも思っていただろうけどね」